昨日で6434人が亡くなった阪神・淡路大震災から、21年になりました。
当院がある神戸市灘区琵琶町も当時すごい被害でした。7割の住宅が全半壊し、町ががれきで埋め尽くされました。
そのため当院の患者様の中にも震災の被災者がたくさんおり、よく当時のお話を聞いては、震災に思いを馳せています。震災の記憶や教訓を未来につないでいくお手伝いを少しでもして行ければと考えています。
JR六甲道駅 <神戸市広報課発行「震災10年~神戸の記録~」より>
阪神電車 新在家駅 <神戸市広報課発行「震災10年~神戸の記録~」より>
神戸市灘区琵琶町1丁目 <神戸市広報課発行「震災10年~神戸の記録~」より>
そこで今日は震災、災害などで大量の負傷者が発生した場合になされる診察の順番付け「トリアージ」と、震災に備えてしておくとよいことについて書いていきたいと思います。
トリアージとは先述の通り、医療資源(医療スタッフや医薬品等)が制約される中で、一人でも多くの傷病者に対して最善の治療を行うため、傷病者の緊急度に応じて、搬送や治療の優先順位を決めることをいいます。
限られた医療資源を最大限に活用しながら治療を行うため、医療機関等では、診療前にまずトリアージが行なわれます。
災害時の混乱の中で、トリアージを行わず通常と同じように受付け順で治療を行った場合、重症者が長時間放置されるということが出てきますし、また、最重症者から治療を始めた場合には、その治療だけで貴重な医療資源が使い尽くされてしまい、確実に救命可能なほかの重症者の治療ができなくなるといったことも考えられます。
こうした問題を解決するために、トリアージ(搬送優先順位、治療優先順位の決定)が必要となります。
救命の可能性が非常に低い者よりも、可能性の高い者から順に救護、搬送、治療にあたるべきであるという考え方です。
トリアージの分類は、次の4つです。
順位 | 分 類 | 識別色 | 傷病等の状態 |
第1順位 | 最優先治療群 (重 症 群) |
赤 色 (Ⅰ) |
・直ちに処置を行えば、救命が可能な者 |
第2順位 | 非緊急治療群 (中等症群) |
黄 色 (Ⅱ) |
・多少治療の時間が遅れても生命には危険がない者 ・基本的には、バイタルサインが安定している者 |
第3順位 | 軽処置群 (軽 症 群) |
緑 色 (Ⅲ) |
・上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療 を必要としない者 |
第4順位 | 不処置群 (死 亡 群) |
黒 色 (0) |
・既に死亡している者又は直ちに処置を行っても 明らかに救命が不可能な者 |
重傷で救命な可能な人から優先的に治療を行い、救命が不可能な人に対しては処置を後回しにする、ということですね。
それでは、この順位付けはどのような手順で行われるのでしょうか?
トリアージには一般的に、START法とPATによるトリアージの2つの方法があります。
〇START法
救助者に対し傷病者の数が特に多い場合に対し、判定基準を出来るだけ客観的かつ簡素にした物がSTART法です。これは、救急救命室で用いられる外傷初期診療ガイドラインで日本版にて、プライマリー・サーベイで用いられるABCDEアプローチに基づいたものとなっています。
具体的には図のようになっています。
〇PAT
Pediatric Assessment Triangle(PAT)を用いて患児の概要を評価し,その後に,意識状態,心拍数,呼吸数,体温,酸素飽和度(SpO2)などを用いて5つのトリアージレベルに分類することです。PATはA,B,Cの略字で代表される3つの要素から構成されており,AはAppearance(外観・見かけ),BはWork of Breathing(呼吸状態),CはCirculation to Skin(循環・皮膚色)を表しています。ABCの項目にはそれぞれ小項目が存在し,診察者はその小項目に異常があるかどうかを判断し,1つでも異常がある場合には「PATの異常」として対応し,トリアージレベルをIII以上とします。
いかがでしたか?
負傷者を最大限救命するために、こういった制度も日々改新されています。
では次に、災害に備えてしておくべきことをご紹介します。
①家具の置き方を工夫する
阪神淡路大震災では、多くの方が倒れてきた家具の下敷きになって亡くなったり、大けがをしました。大地震が発生したときには「家具は必ず倒れるもの」と考えて、転倒防止対策を講じておく必要があります。
具体的には、家具を壁に固定したり、寝室や子ども部屋には、できるだけ家具を置かないようにしましょう。置く場合も、なるべく背の低い家具にするとともに、倒れた時に出入り口をふさいだりしないよう、家具の向きや配置を工夫しましょう 。
②食料・飲料・生活必需品などの備蓄
電気やガス、水道などのライフラインが止まった場合に備えて、普段から飲料水や非常食などを備蓄しておきましょう。飲料水(一人一日3リットルが目安)や、非常食の他に、トイレットペーパーやマッチなどの生活必需品なども用意しておくとよいでしょう。
また、飲料水とは別に、トイレを流したりするための生活用水も必要です。日頃から、水道水を入れたポリタンクを用意する、お風呂の水をいつも張っておく、などの備えをしておきましょう。
③家族同士の安否確認方法の決定
別々の場所にいるときに災害が発生した場合でもお互いの安否を確認できるよう、日頃から安否確認の方法や集合場所などを、事前に話し合っておきましょう。災害時には、携帯電話の回線がつながりにくくなり、連絡がとれない場合もあります。その際には以下のサービスを利用しましょう。
*災害用伝言ダイヤル
局番なしの「171」に電話をかけると伝言を録音でき、自分の電話番号を知っている家族などが、伝言を再生できます。
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2090.html
*災害用伝言版
携帯電話やPHSからインターネットサービスを使用して文字情報を登録し、自分の電話番号を知っている家族などが、情報を閲覧できます。
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2719.html
いかがでしたか?自分や家族の大切な命を守るために、震災の記憶を風化させず、万全の備えをしましょう。