不妊治療の保険適用の範囲が拡大されたことで、メリットもある反面、デメリットもあります。
今回はどういったメリット、デメリットがあるのかをまとめてみました。
保険適用のメリット
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不妊治療が「標準化」された
不妊治療は一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療であり、標準化が難しいとされてきました。しかし、年齢制限や回数制限があるとはいえ、一定のレベルで標準化されたことで、治療の方法や進め方が分かりやすくなり、不妊治療を始めやすくなったと感じる方もおられるでしょう。
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治療費の負担が軽減される
自由診療だった不妊治療が保険適用されたことで、これまで経済的な理由で不妊治療を受けることやステップアップすることを諦めていた方たちの治療の選択肢が増えました。また、高額療養費制度を活用することでさらに出費を抑えることができます。
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医療機関ごとの費用の差が少なくなる
自由診療では医療機関ごとに料金を設定できるため、医療機関ごとに料金がバラバラでした。保険診療になるとこうした大きな違いはなくなります。
保険適用のデメリット
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助成制度の廃止により経済的負担が増える場合がある
現在の日本の法律では、歯科医療の一部を除き、混合診療(保険診療と自由診療をあわせて治療すること)が認められていません。そのため、保険診療や先進医療として認められていない治療法を行おうとする場合、保険診療の対象となる部分も含めて全額自己負担となります。これまでは助成制度により支払った治療費の一部が返ってきましたが、助成制度が廃止されたことで保険診療や先進医療として認められていない治療法を必要とする方の実質的な経済的負担が増えるケースがあります。
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受けられる治療に格差が生じる可能性がある
保険診療や先進医療の診療を行うと、保険診療の審査機関に申請する作業が必要になります。規模の大きな医療機関であればこうした申請作業を行うことも難しくありませんが、小さなクリニック等では難しい場合もあり、先進医療を行わないクリニックが出てくることも考えられます。
また、先進医療として認められなかった治療法を行う場合は保険診療の部分も含めて全額自己負担となることから、高額な治療費を支払えるだけの経済的余裕のある方だけがそうした治療を受けられるという状況が生じることも予想されます。
このように、医療機関や経済状況によって受けられる治療に格差が生じる可能性があります。
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治療法の研究が進歩しづらくなる可能性がある
不妊治療の治療法は発展途上にあり、これまで自由診療だったからこそ世界中から最新の医療を取り入れることができ、治療法が発展してきた部分があります。保険適用になって標準化されることで、こうした新たな治療法の開発が進みにくくなることも考えられます。
まとめ:まだまだ課題はあるが、メリット・デメリットを踏まえてうまく活用を
このように、不妊治療の保険適用にはメリットもある一方、今後の改善点も多くあります。
ただ、不妊治療は時間との勝負でもありますので、メリット・デメリットを踏まえた上で主治医やパートナーと相談しながら判断し、【今できること】に取り組んでいきましょう。